【被害者側】物損事故から人身事故に切り替えるには?必要な手順や注意点を解説

投稿日 2023-03-03 | 最終更新日 2023-07-19

いきなり事故にあってしまった場合、気が動転しており相手に「怪我はありません」と言ったものの、翌日起きてみると首が痛かった。なんて事は交通事故ではよくあることです。

事故後に体のどこかが痛むとなった場合、相手に「怪我はありません」と言ってしまったから気が引けるなぁと何もしないでいるとせっかく受けられる補償が受けられなくなってしまいます。

ここでは、物損事故から人身事故に切り替えるために必要なことを被害者側の視点から解説していきます。

加害者側で物損事故から人身事故への切り替えについてはこちらをご覧ください。

物損事故と人身事故の違い

物損事故とは字のごとく「モノ」に対して損害が生じてしまった事故になります。これには電柱や車などが当てはまりますが、その事故で誰か人が死傷してしまった場合は人身事故という扱いになるのです。

言い換えると相手がいる事故で車のみに損害が生じた事故は物損事故、車とその車に乗っていた方に損害が生じたものは人身事故の扱いとなります

また、事故で同乗者やぶつけてしまった相手が死傷してしまった場合は最初から人身事故として話が進みますが、むち打ちなど体の内部のダメージは特にそうですが事故の翌日や翌々日など、事故後に体が痛んでくるということは少なくありません。

加害者が人身事故に切り替えると起きるデメリットとは

よく事故後にもめるケースとしては、事故現場で事故の加害者から「人身事故にしてしまうとお互いデメリットがあるから」などと言われ物損事故扱いにされたという話をちょくちょく聞きますが、一切そんなことはありません

その場では体は何ともなかったとしても、先ほどお伝えした通り事故後に体のどこかが痛くなるケースは十分に考えられますので、相手の言いなりには決してならないでください

また、後ほど解説しますが物損事故から人身事故へ切り替える場合は期限がありますので、もう人身事故へ切り替えることができなくなってから相手側が「考えてみたけどあなたにも過失がある」などと言ってくる可能性も考えられます。

この場合、被害者のはずが何も補償が受けられなかったなんて事にもなりかねませんので十分に気をつけましょう。

加害者が人身事故にしたがらないのは次の3つが大きな理由として挙げられます。

刑事処分(罰金、禁固、懲役)

物損事故は罰金などの刑事処分はありませんが、人身事故になるとそうとはいきません。

被害者の治療期間が1ヶ月~3ヶ月で被害者には過失がなかった場合、最悪30万円~50万円もの罰金が科されてしまいます

行政処分(点数)

被害者の治療期間が1ヶ月~3ヶ月で被害者には過失がなかった場合、最悪9点が引かれますので免停は免れません。

もし9点が引かれた場合は、前歴がなかった場合でも120日間は車を運転することができませんのでかなりダメージが大きいものになります。

さらに過去3年間の違反点数も加算されますので合計15点以上ともなれば免許取り消しとなってしまいます。

民事処分(賠償)

物損事故でもぶつけたものには賠償責任が発生するのですが、人身事故になればそれに加えて身体的・精神的な賠償も発生しますので治療費・慰謝料・通院の交通費・給料の補償などが加えられて賠償金額も高くなります

加害者は物損事故にしたい、被害者は人身事故の方が補償範囲は広い

上述した通り、加害者からすれば物損事故から人身事故に切り替えることで罰金や減点、賠償しなければいけない金額が上がるなど様々なデメリットが生じてしまいます。

ただ、被害者側からすると補償される範囲が広がるという点では人身事故の方が得策となる場合が往々にしてあるのです。

事故にあってすぐ体に不調が出た場合はもちろんですが、事故後に体に不調が出た場合でも臆さずに人身事故の切り替え手続きをするようにしてください。

物損事故から人身事故へ切り替えられる際の注意点

物損事故から人身事故へ切り替える際は電話1本で切り替えられるものではありません。ここでは物損事故から人身事故に切り替える際に注意するべき2点を解説します。

事故後7日~10日以内には切り替えの手続きをする

事故現場に警察を呼び、物損事故として処理した際に警察官から

「もしこの後、むち打ちなど体に問題があった場合は〇〇日までに人身事故に切り替えてください」

などと言われていれば、その期日までに人身事故の切り替え手続きを行う必要があります。

もし何も言われていない場合は、事故後7日~10日間が期限と考えて行動してください。

「むち打ちの症状が出てるけど後でいいや」と1か月後に切り替えをしようとしても、本当にその事故で負った怪我かどうかの判断がつかないし当事者同士も記憶があいまいになってまともな供述がとれないことなどから切り替えが出来ない可能性が非常に高いのです。

切り替える際は自分と相手、両方が警察署に行く?

後ほど解説しますが、物損事故から人身事故への切り替えには病院に行って診断書をもらう必要があり、診断書を警察に提出した場合、人身事故への切り替えに必要な調書を新たに作成するため加害者は警察署に呼ばれます。

そして被害者も絶対ではありませんが警察署に行って事故の供述をしたほうがいいでしょう。

なぜなら被害者が供述しないと、加害者の一方的な意見で調書が書かれてしまうからです。

もし体に痛みがあり警察署に行くのが困難な場合は、電話で相談してみましょう。

物損事故から人身事故への切り替え手順

ここからは人身事故へ切り替えるための手順について解説していきます。

ここで一番重要なのは病院からの診断書期限内に切り替え手続きを行う事です。

1. 相手(加害者)の保険会社へ連絡

事故後に体のどこかに不調が起きた場合は相手(加害者)の保険会社に連絡をして体のどこが痛いのかということと、病院に行くという報告をします

病院に行った後で連絡をしても問題はないと思いますが、人身事故へ切り替えるとなると前述した通り、補償する金額が高くなりますので初めに言っておいた方が賢明でしょう。

2. 病院へいき診断書を作成してもらう

その症状に合わせた病院に行き、診断書を作成してもらいましょう。

ちなみに接骨院では診断書は作成できません。その理由としては接骨院の方は医師の免許を持っていないからです。

病院に行く前に電話をして事故によってできた痛みであることと、診断書の作成ができるのかを確認するようにしてください。

また、場合によっては再度相手の保険会社に連絡をして「〇〇病院に行きます」と伝えてください。

3. 警察署へ行き診断書を提出する

病院から診断書を受け取ったら警察にその診断書を提出しましょう。

ここで間違えてはいけないのがここまでの過程を7日~10日以内にしなければいけないという事です。

病院に行って診断書をもらい警察署に提出するまでを7~10日以内にしなければいけないので気を付けてください。

警察署に診断書を提出したら物損事故から人身事故への切り替えを警察署の担当者が行っていきます。

4. 警察による事故捜査(現場検証)

物損事故は「物件事故報告書」という事故の報告書を作成しますが、人身事故の場合は「実況見分調書」を作成します

警察が第三者となり加害者、被害者双方から供述をとり調書としてまとめられ、物件事故報告書に比べより詳細に捜査されます

これは事故の過失割合を決める大事な調書となりますので、先ほどもお伝えしましたが被害者の場合でも警察署にて調書をとってもらうようにした方がいいでしょう。

5. 相手(加害者)の保険会社へ必要書類を提出する

人身事故となれば物損に加えて、慰謝料・治療費・通院のための交通費・仕事を休まれた場合はその給料なども補償対象になりますので、そのための必要書類が相手の保険会社から送られてきます。

必要事項を記入の上、返送してください。

人身事故へ切り替えができないときの対処方法

物損事故から人身事故へ切り替える事が難しく感じることがある場合があります。

ここでは被害者が協力的ではなかった場合と、警察署の担当者が協力的ではなかった場合の2通りについて解説していきます。

1. 加害者が協力的ではないケース

前述したとおり、加害者はできる限り人身事故にはしたくないというのが心情です。

なので「診断書ももらっているし人身事故に切り替えるため、供述をとるため警察署に来てください」と言っても応じてくれない場合があります。

そういった場合は警察にその旨を伝えて指示を仰いでください。先ほど供述書は被害者がいなくても作成できるとお伝えしましたが、加害者がいなくても作成はできます

被害者の一方的な意見での調書にはなってしまいますが、作成すること自体は可能なはずですので警察の担当者に相談しましょう。

2. 警察の担当者が協力的ではないケース

事故から日数が経ってしまっている場合など、警察の担当者が協力的ではない場合も考えられます。

警察の担当者は、人身事故に切り替えると加害者・被害者の取り調べや、当事者と現場へ再度行き実況見分を取らなければいけないなど、業務量が増えるので嫌がる人も出てくるでしょう。

しかし人身事故への切り替えにはこの手続きが絶対に必要ですので、警察の方が多少嫌がったとしても必ず切り替えてもらいましょう

ただ、万が一警察に断られた場合でも保険会社に「人身事故証明書入手不要理由書」というものを提出することで通院費などの補償を受けることができる場合がありますが、これはほとんどが軽傷の場合に限られますし、絶対に使えるわけではありませんので注意が必要です。

まとめ

物損事故から人身事故の切り替えには、病院の診断書や警察署に出向き供述をとってもらうなど面倒なことが増えるのは事実です。

しかし、だからといって事故後に体が痛くなったけどそのままにしていたでは何も補償を受ける事ができません。

事故後に体が痛いなどの症状が出たら、当記事を参考にして頂き、臆することなく相手の保険会社に連絡をとり適切な行動をとるようにしてください


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